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星和Career Next2022 第2回公開セミナー
変化の時代の
「キャリア自律」とは
講師:高橋 俊介氏
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員
2022年8月4日(木)13:30~15:30
オンラインLive配信(Zoom)
Profile
1978年東京大学工学部航空工学科を卒業。日本国有鉄道に入社。
84年米国プリンストン大学工学部修士課程を終了し、マッキンゼーアンドカンパニ-東京事務所に入社。
89年世界有数の人事組織コンサルティング会社である米国のワイアットカンパニーの日本法人ワイアット株式会社(現ウイリスタワーズワトソン)に入社。
93年に代表取締役社長に就任。97年7月社長を退任。個人事務所ピープル ファクター コンサルティングを通じて、コンサルティング活動や講演活動、人材育成支援などを行う。
2000年5月慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の教授に就任。個人事務所による活動に加えて、藤沢キャンパスのキャリアリソースラボラトリーを拠点とした個人主導のキャリア開発や組織の人材育成についての研究に従事。
11年11月から、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。22年4月から、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。
登壇者インタビュー
星和インタビュアー(以下、星和):高橋先生、8月4日開催の「星和Career Next 2022」へのご登壇ありがとうございます。
今日のインタビューでは、セミナー当日にお話をいただく「変化の時代のキャリア自律」について、少し前段となる部分のお話をいただければと思います。
高橋:わかりました。ではまず、キャリア形成のメカニズムをどう理解するかという部分からお話していきましょう。
星和:キャリア形成のメカニズムですか、これまで意識したことがなかったですね。
高橋:昔から、「キャリア理論」とか「キャリア論」というものがありますが、多くはアメリカで発達してきたものです。例えば、若い人が就職をするときに考える枠組みとかね。基本的には「マッチング理論」が主流でした。アメリカやヨーロッパでは、30歳ぐらいで就いた仕事が最後まで、もしくは長期雇用に至るケースが多かったのです。
若いころに試行錯誤した中から、自分が生涯やりたい仕事、一生をかける職業を選択する。それを支援するために「キャリア理論」が発達してきたのです。端的に言えば、その人のやりたいこと、向いていることが何かを見つけるというものです。
星和:私が就職した30年前でも、どんな仕事に就きたいかという意識は持っていましたが、それ以上に、どの会社に入るかという気持ちの方が大きかったですね。
高橋:そうですね、このアメリカでの考え方の背景には、元々欧米のプロテスタンティズムというものがあって、よくジョブ型雇用と言われますが、プロテスタントの中(特にアメリカに渡った人達の中)で、カルヴィニズム(改革信仰)がベースとなっているような考え方では、ざっくり言って、天国に行けるかどうかは、神さまから与えられたミッションをどう達成するかで判明する。そして、神さまから与えられたミッションが何かというと、それが職業なのです。つまり、あなたの職業は、神さまが与えられた天命(ミッション)で、それをあなたが一生懸命行うことが、天国に行けることの証になるという考え方なんですね。
星和:宗教的な考え方が影響していたのですね。
高橋:そうなんです。天職のことを英語でCalling、ドイツ語ではBerufというのですが、天職というのは向いているとか、好きな仕事ということではなく、神さまから与えられた人間としてのミッションというような意味合いがあるのです。つまり、一つのことをずっとやり続けるという概念の背景には、そんなプロテスタンティズムがあるのです。
星和:そのような背景があるからこそ、ジョブ型が受け入れられたのですね。でも、そのような考えが通用しない場面も出てきますよね。
高橋:世の中が安定している時代はそれでも良かった。ところが、就いていた仕事自体が無くなることが特別なことではない時代がくるわけです。AIが登場する前から、仕事が無くなるということはありました。
例えば、炭鉱での仕事が無くなりましたね。仕事が無くならないまでも、内容が大きく変わってしまうこともあります。事業構成が変わってしまうとか、あるいは、どこかと合併して自分の仕事が無くなってしまうとかね…
星和:私が社会人となってからも、そのように感じる場面はありましたね。
高橋:そうでしょ。同じ仕事に就いていることが、最終的に幸せな人生、幸せなキャリアに結び付くわけではないのです。こちらがじっとしていても、世の中が動きますからね。常に新しいことをやり続け進化し続ける自分が、変化し続ける世の中と並走していく、そんな考え方に変わっていくわけです。
クランボルツ理論のように、結局のところ、キャリアは偶然に左右されることが多く、計画通りのキャリアはなかなか作ることができないということです。
星和:たしかに、その考え方はしっくりきますね。
高橋:クランボルツの論文が1999年に発表され、我々SFCにもキャリアリソースラボラトリーというのができました。2000年に藤沢キャンパスに小さな建物ができたのですが、当時としては非常に先駆的な取り組みでした。
当時の問題意識としては、変化が激しく先が読めない時代に、日本的な会社任せのキャリアを作っていてはダメということ。自分で主体的にキャリアを作らなくちゃいけないということでした。
主体的なキャリアが作りやすく、転職がしやすかったアメリカにおいてもキャリアの作り方が大きく変わってきていた。キャリアそのもののプロセスが静的な均衡状態を作ることから、ダイナミックに変化し続けるという風に変わってきていたのです。
星和:「ダイナミックな変化」とは具体的にはどのようなことでしょうか?
高橋:そうですね。我々も、何がダイナミックなキャリア自律に関係しているかを分析するために、2000年ごろ、外資系を含め様々な業界の大手企業14社にご協力をいただいて、30代~50代の2500人くらいを対象にキャリアに関する調査を実施したのです。
星和:どのような調査だったのですか。
高橋:ここでは、「これからのキャリアをどうしたい?」という将来への願望ではなく、自身の過去を振り返ったときに「あなたは自分らしいキャリアを歩んできたと思いますか」ということを聞いたのです。
「キャリアに満足していますか」とか「あなたは勝ち組だと思いますか」という質問もありましたが、私はキャリアに勝ち負けはないと思っていて、ずっと「自分らしいキャリアの作り方」をキーワードに考えてきたので、この問いを入れたのです。
星和:ところで、「自分らしいキャリア」とはどのように考えたらいいでしょうか。
高橋:そうですね、等身大とでもいいますか、自分自身が一番ポジティブに反映されている。そんな状態です。自分のキャリアを振り返ったとき、自分らしく愛おしいと思えるような状態になっているか、「内的動機」だったり「価値観」などがポジティブに反映されているか。まさに自分の特性が出ているなと思えるようなキャリアが「自分らしいキャリア」だと思います。
星和:なるほど、そういうことなんですね。他にはどんな質問があったのでしょうか。
高橋:「自分で切り拓いてきたキャリアだと思いますか」という質問もありました。実はこの質問、「あなたは自分らしいキャリアを歩んできたと思いますか」という質問と、とても相関が高く、この二つの質問の両方に「Yes」と答えた人が、まさに主体的にキャリアを作ってきた人だと言えると思うのです。
他にも、「あなたは今の給料に満足していますか」や、「キャリア自体に満足していますか」といった質問。“社外通用感”をはかる「あなたは、会社を辞めても外で通用すると思いますか」など70~80の項目を統計学的に分析したところ、面白いことが分かったんです。
それは、「あなたは今までを振り返って、5年後、10年後の具体的なキャリアゴールを意識してきましたか?」という質問と、先ほどの主体的なキャリアを作ってきた人との相関係数は0.1くらいしかなかったのです。
星和:えっ、関係がないってことですか?
高橋:有意性はないと言えますね。このことから、キャリアに目標を持っていることが即ちキャリア自律ではないということが判明したわけです。ただ、マイナスではないので、具体的な5年後10年後のキャリアデザインを持っていることが邪魔にはなっていませんよ。
でも、変化の激しい時代に、自分が描いているキャリアデザインに拘泥するとあまりいいことはないと思いますね。
目標を持っていても柔軟性を備えていればいいのですから。
星和:なるほど、柔軟性ですか…我々中高年が失いがちなキーワードですね。
さて、まだまだ、お話の続きを聞きたいところですが、「相関係数が高かった行動」については、弊社が配信するメールマガジン「星和HRインフォメーション」の中でお伝えしていきたいと思います。楽しみにしていてください。
そして、今日のお話も含め、8月4日の公開セミナー(星和Career Next 2022)では「変化の時代のキャリア自律」について更に詳しくお話をいただきたいと思います。
星和:それでは高橋先生、今日はありがとうございました。
【セミナーは終了しました】
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