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お知らせ
- 2023/12/08
- お知らせ 多くの中高年会社員が避けては通れない介護問題を考える(1)
働きながら「幸せな介護」を目指す
これから4回にわたり、介護問題に取組む、「一般社団法人QOLアカデミー協会」「株式会社QOLアシスト」の代表 矢野憲彦氏からビジネスパーソンが理解すべき介護問題についてお話をいただきます。
◆人生の質を高めるために
このメールマガジンをお読みになっている皆様の中には、そろそろ家族の介護や将来のことが心配になっている方や、すでに介護の悩みや不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
今は介護の不安はないという方も「辛く、苦しく、悲しい」と考えられがちな介護を恐れて見ないふりをしていらっしゃるのかもしれませんね。
しかし、高齢の親や家族を持つ方であれば、明日にでも介護問題に直面する可能性があります。
この「介護」という人生における大きなイベントが、自分の人生や仕事を犠牲にするものではなく、家族に喜ばれ、満足いくものにできたら素晴らしいと思いませんか?
私が代表を務める一般社団法人QOLアカデミー協会、株式会社QOLアシストでは、シニアとその家族の人生の質(QOL=クオリティーオブライフ)を高めるための活動を行っていますが、このQOLを高めるためには、「介護」という課題を避けて通ることはできません。
このメールマガジンでは、これから4回にわたり介護に関する情報を発信してまいりますが、働く世代の方々に後悔のない人生とQOL向上を実現し、「幸せな介護」を実感いただくヒントとなれば幸いです。
◆日本の超高齢社会の現状と課題について
今、日本が超高齢社会に突入しているということは皆様もご存知のところだと思います。WHOの定義では65歳以上を「高齢者」と定義しています。そして、ある国の65歳以上の人の割合を「高齢化率」として発表しています。
高齢化率が7%を超える社会を「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」としています。
日本ではそれとは別に65歳以上75歳未満の人を前期高齢者、75歳以上の人を後期高齢者と呼んでいます。
日本では1950(昭和25)年頃の高齢者は総人口の5%程度でした。その後1970(昭和45)年は7%、1994(平成6)年は14%を超えています。
そして現在、65歳以上人口は3,627万人で総人口の29.1%を占めています※1。
この高齢化率は、WHOが定義する「超高齢社会」の21%以上の基準を大きく上回っており、他の国と比べても突出して高い水準です。
ちなみに世界の国の高齢化率(2020年)でみてみると、アメリカ16.6%、中国12.0%、フランス20.8%、インド6.6%です※2。
日本の高齢化は今後も進行すると見込まれており、2065(令和47)年には65歳以上人口は総人口(8,808万人)の38.4%で約2.6人に1人、3.9人に1人が75歳以上となる社会が到来すると推計されています※3。
◆少子高齢化の現状と課題
高齢化と共に問題となっているのは「少子化」です。1人の女性が一生涯に平均して出産する子どもの数を示す合計特殊出生率が2.1以上であれば、人口は増加するとされています。
日本では1960年代から1970年代初頭にかけては、おおむね2.0以上という高い水準を維持していました。しかし、1970年代中頃以降、急速に低下し、1.5以下にまで落ち込み、2020年代に入ると約1.3前後で推移しています。2022年には、新型コロナによる影響で、過去最低だった2021年の1.30を0.04ポイント下回り過去最低の1.26を記録し、出生数も前年を4万875人下回る77万747人となり、初めて80万人台を割り込みました※4。
1947年から1949年は第一次ベビーブームで、出生数は急増しました。この3年間に約964万人が生まれ、「団塊の世代」と呼ばれています。2025年にはこの世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療や介護などの社会保障費の増大が懸念され、「2025年問題」ともいわれています。
年齢と共に要支援・要介護の認定を受ける人の割合は増えていきます。60代のうちは3%未満にとどまりますが、70代に入ってからどんどん上昇していき、85歳以上では60%まで達してしまいます。また、認知症患者の数も2015年時点では517万人でしたが、2020年では602万人、2025年には675万人に達し、2050年には1,000万人に届く可能性もあります。2040年には高齢者の46.3%、つまり2人に1人が認知症を発症する可能性があるといわれています※5。
要支援・要介護者の増加は介護職員の不足も深刻化させます。厚生労働省は介護職員の数が、2025年度に約32万人、2040年度に約69万人不足すると発表しています※6。
介護職員が不足するということは、皆さんの家族が要介護状態になっても質の良い介護支援を受けることが難しくなるということです。必然的に介護に関して、家族が負担する比重が高くなるということを考慮しておいてください。
以上、私たちの置かれている現状をご理解いただけたでしょうか? 今はまだ実感がない方も多いかもしれませんが、今のうちに準備をしておかないと、介護で苦悩し、体調を崩し、仕事を辞めなければならない事態になるかもしれません。
最悪の事態を避けるために、次回は、家族の介護の現状と介護離職を避ける方法についてお伝えしたいと思います。
※1 総務省 統計トピックスNo.132「統計からみた我が国の高齢者」
※2 内閣府「令和4年版高齢社会白書 全体版」
※3 内閣府「令和4年版高齢社会白書 全体版」
※4 厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
※5 ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート2023-07-25「令和 5 年全国将来推計人口値を用いた全国認知症推計(全国版)」
※6 厚生労働省 社会・援護局「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
【筆者プロフィール】
矢野 憲彦(やの・のりひこ)
株式会社 QOLアシスト 代表取締役
一般社団法人 QOLアカデミー協会 代表理事
関西学院大学卒業。東京の健康医学の研究所にて自然治癒力の研究と教育に専念。
東京大学大学院医学系研究科の研究生として通い、健康講座を全国で1,400回以上開催、健康人生相談は5,000件以上実施。
2010年独立後、介護の学校を立ち上げ1,800名以上の介護職員を養成。シニアとその家族の人生の質(QOL)を高めることを使命に活動中。
現在、高齢の親が家族に迷惑をかけず、悔いのない人生を送るために、認知症予防や自己肯定感向上をサポートし、見守りと親孝行ができる「わた史書・回想サービス」を展開中。
上級心理カウンセラー、介護離職防止対策アドバイザー、心療回想士、ヘッドリンパセラピスト、メンタル心理カウンセラー、1級フードアナリスト
などの資格取得。
◎ 星和ビジネスリンクは、現役世代が定年後の人生を豊かに過ごすための調査研究を行う機関として、「一般社団法人 定年後研究所」を設立しました。
定年後研究所のWebサイトはこちら
◎ 一般社団法人 定年後研究所 お問い合わせフォーム
- 2023/12/01
- お知らせ 活躍の場を提供する「産業雇用安定センター」 (3)
「人材育成型出向等支援」と「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」の活用
公益財団法人産業雇用安定センターの事業を紹介する連載の3回目(最終回)となる今回は、人材育成などを目的とする出向支援と、本年(2023年)10月から開始された雇用型の副業情報提供事業について、同センター業務部長の金田弘幸(かなだ・ひろゆき)氏からご紹介いただきます。
◆人材育成型出向等支援
従来、産業雇用安定センターが取り扱う出向支援は、企業において一時的に雇用過剰となった人材の雇用調整を目的とした在籍型出向を対象としていました。今回の連載1回目(10月25日配信)で紹介した新型コロナ禍での在籍型出向がその典型的な例です。
一方、出向という我が国特有の人事・労務管理の形態には、雇用調整を目的とするものとは別に、ポジティブな可能性を持つものがあることがセンターによる出向支援の成立事例から見受けられるようになりました。例えば、従業員の能力開発やキャリアアップなどを目的とする出向へのニーズです。センターではこのような事例を「人材育成型出向等支援」として取り組んでいます。
この「人材育成型出向等支援」は次の2つに大別されます。
◆1.人材育成型出向等支援(1)(人材育成・交流型出向)
従業員の能力開発や人材育成、特に高度人材の育成により企業力の強化を図る場合や、人材交流を目的とした取り組みにより、企業間の連携強化、新分野への展開のための基盤整備、組織の活性化等を図ることを目的とする出向をいいます。出向後は、元の企業に復帰します。
◆2.人材育成型出向等支援(2)(キャリア・ステップアップ型出向)
従業員自らのキャリア・ステップアップへの主体的な挑戦、自身のキャリアパスやライフプランに合わせた職域拡大、UIJターン等を企業が後押しする出向をいいます。出向後は、元の企業に復帰または出向先に移籍します。
◆ビジネス人材雇用型副業情報提供事業
グローバル化の加速や少子高齢化の進展などにより、近年、日本の終身雇用を前提とした年功序列や職能型の雇用慣行は、大きく様変わりしました。それに伴い、従業員個人の自律的な複線型のキャリア選択や、ライフステージに応じた多様な働き方へのニーズが高まっています。企業も従業員の「副業・兼業」を後押しすることで、従業員の新たなスキルの獲得を核とした新分野展開や企業へのエンゲージメント向上などを期待する傾向もみられるようになってきました。
センターでは、本年6月から7月にかけて約7,600社に対して「副業・兼業」に関するアンケートを実施しました。回答企業1,054社のうち、従業員の「副業・兼業」を認める企業は、予定も含めて約5割であることが明らかとなりました。
アンケート結果の概要はセンターHPに掲載しています。
このアンケート結果を受けて、センターでは「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」を本年10月から東京、大阪、愛知でスタートしました。
「副業・兼業」には、他社から業務を受託して行う形態と、他社に雇用される形態の副業があります。センターが出向・移籍など雇用面での業務に長く取り組んできた特性を活かすことにより、雇用型による副業を希望する人材の情報を、副業を受け入れたい企業に対して提供します。
具体的には、企業在職者で他の企業に雇用される形態の副業を希望する方(ビジネス人材)にセンターのHPを通じて登録していただきます。そのうえで、人材の受け入れを希望する企業の情報を登録者に提供し、両者での労働時間や賃金などを話し合う面談の場を設定します。両者が納得し合意した場合、労働契約を締結していただき雇用型副業が始まるという流れになります。
従業員が他社に雇用される形態の副業を在職中の企業が後押しする場合、適切な労働時間や健康管理という点に不安を抱くこともあるかもしれません。このようなことについては、企業が従業員との間で、あらかじめ自社での労働時間と副業先企業での労働時間を明確に決めておくことで不安の解消に繋がります。また、柔軟な雇用は、人材の定着や多様な人材に選ばれる企業となる可能性が高まるなどのメリットもあります。この機会に従業員に対してセンターの「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」をご紹介いただければ幸いです。
「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」のWebサイト
◆おわりに
これまで3回にわたって産業雇用安定センターの事業、(1)雇用調整の「出向・移籍支援」、(2)60歳以上の求職者のための「キャリア人材バンク」、(3)「人材育成型出向等支援」と(4)「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」について紹介してきました。これらの事業は企業が負担する雇用保険料を原資として厚生労働省から補助金の交付を受けることにより、無料でサービスを提供していることはこれまでお伝えしてきたとおりです。
企業の皆様には、センターの事業にご関心やニーズがある場合には、センターHPをご覧になっていただくとともに、全国47のセンター地方事務所にご連絡いただければ、センターのサービスについてご案内に上がります。
◎ 株式会社 星和ビジネスリンク お問い合わせフォーム
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- 2023/11/16
- お知らせ 活躍の場を提供する「産業雇用安定センター」 (2)
シニアのキャリアチェンジを支援する「キャリア人材バンク」
前回は、「産業雇用安定センター」が企業に提供する出向・移籍支援についてご紹介いただきました。今回は、高齢者の再就職をサポートする「キャリア人材バンク」についてお話しいただきます。
産業雇用安定センターでは、60歳以上の方が自らの職業経験や資格などを活かして、「生涯現役」としてご活躍いただくための「キャリア人材バンク」を全国47のセンター地方事務所で展開しており、無料でご利用いただけます。
近年、多くの企業が人手不足に直面しています。厚生労働省が今年7月に発表した来春の高校卒業予定者に関する求人・求職状況では、求人が前年同期に比べて10.7%増となっている一方で、就職を希望する高校生は5.5%減となっています。企業がフレッシュな人材を採用し、中長期的に人材育成をすることで成長・発展していくことは重要です。しかし、今後も日本全体で労働力人口が減少する中、限られた年齢層に期待することは難しい環境にあります。そして、この傾向は今後一層強まることは明らかです。
このため、我が国が持続的に成長するには、DXなどによる生産性向上を進めるとともに、高齢者や障がい者をはじめとする多様な人材にも社会で活躍してもらえるよう環境整備を進めることが重要です。
産業雇用安定センターのキャリア人材バンクでは、60歳以上で再就職を希望する方と、人材確保に苦慮している企業との間でのマッチングを行っています。そして、近年その再就職の実績が大きく増加しています。(図1)
キャリア人材バンクへの登録は、企業に在職する60歳以上の方、または60歳以上で企業を退職後1年以内の方が対象です。
例えば、
〇 定年年齢に達する従業員が、再雇用制度を利用せずに退職する場合
〇 再雇用期間が65歳で満了となる従業員が退職する場合
〇 再雇用されている高齢の従業員が退職する場合
などが該当します。
このように、就労を希望される60歳以上の方が企業を退職される場合には、人事ご担当者様からキャリア人材バンクへの登録を勧めてください。退職する方がキャリア人材バンクに関心がある場合には、人事ご担当者様または、退職される方から直接センター地方事務所にご一報いただければ、具体的な説明と登録のご案内をいたします。
また、既に企業を退職した方でも、退職後1年以内であれば、キャリア人材バンクをご利用いただけます。
高齢者の場合、若い頃に就職活動をして以来、キャリアシートの作成や採用面接などの経験は少なく、それを負担と感じて再就職に向けた一歩を踏み出すことを躊躇してしまう傾向があります。
センターでは登録した方の経験や希望をうかがいながら、求人企業のニーズを踏まえて、キャリアシートの作成や面接のシミュレーションなどのサポートを行います。
しかしながら、就業希望の方がいても、求人企業の中に希望する業種、職種がないこともあります。仮に求人があって、応募の条件が年齢不問となっていても、実際には若い方の採用を意図している企業も少なくありません。
このような場合には、センターのコンサルタントが焦点を絞って新たな求人企業を開拓します。同時に、求人企業に対して登録者の方の経験、能力や資格だけでなく人柄なども粘り強く説明することで、「そんなに言うのなら一度会うだけ会ってみようか」という言葉が得られることも少なくありません。そうなると、採用の確率はぐんと上がります。
センターのコンサルタントは、企業において人事・労務や営業の管理職、技術部門の責任者としての豊富な経験を有するシニア世代が多く、再就職に向けた相談はもちろん、家族のこと、老親の介護、実家のことなど同世代としての悩みにも共感しつつ、マンツーマンで丁寧なサポートにあたっています。
このようなきめ細かいサポートの結果、2022年度においては約3,000人の方の再就職が実現しています。そのうち登録後3か月以内に再就職した方は約4割、6か月以内に再就職した方は全体の約6割に上っています。
長年にわたって企業に貢献してこられた方には、退職後も健康でそれまで培った経験を活かして社会の中で長く活き活きと活躍していただきたいものです。一度、「マンガでわかる キャリア人材バンク」(図2)をお読みいただき、企業の人事ご担当者様や退職する方にキャリア人材バンクをご利用いただきたいと思います。
PDF「マンガでわかるキャリア人材バンク」はこちら
※二次元バーコードからアクセスしていただくと、動画版(YouTube)「マンガでわかるキャリア人材バンク」をご覧いただけます。
連載3回目となる次回は、従業員の人材育成や企業間の交流のための出向のほか、この10月からスタートした雇用型の副業情報提供事業についてご紹介いたします。
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- 2023/11/02
- お知らせ 活躍の場を提供する「産業雇用安定センター」 (1)
産業雇用安定センターをご存知ですか
星和HRインフォメーションでは、本号から3回にわたり「失業なき労働移動」を支援する専門機関として設立され、35年以上の歴史を持つ「公益財団法人産業雇用安定センター」について、同センターの業務部長である金田弘幸(かなだ・ひろゆき)氏よりお話をいただきます。
◆はじめに
このメールマガジンをお読みの皆様は、「産業雇用安定センター」をご存じでしょうか?
産業雇用安定センターは、1987年に当時の労働省、日経連のほか、様々な産業団体のご協力により公益財団法人として設立されました。以来、多くの企業の出向・移籍の支援を行い、これまでに約25万人の出向・移籍のあっせんを成立させてきました。
センターは、企業が雇用調整を行う際の在籍型出向支援や移籍支援のほか、高齢者の再就職支援のためのキャリア人材バンクや、企業間で人材育成・交流等を行う場合の出向・副業に関する支援にも取り組んでいます。
これらの事業は、企業が負担する雇用保険料の一部を財源として厚生労働省から補助金の交付を受けて無料で実施しています。ですから、企業の皆様が支援を必要とする場合には、是非当センターの事業をご活用いただきたいと考えています。
このメールマガジンでは、センターが行う事業が企業にどのように役立つのか、その具体的な支援の対象者や支援のプロセスについてご紹介いたします。
◆産業雇用安定センターの出向支援
我が国における在籍型出向は、主に大企業の人事慣行のひとつとしてグループ内企業や取引先企業に出向させる形で定着していました。しかし、経済環境の変化によって一時的に高水準の雇用過剰の状態となった時には、グループ内企業で吸収することは困難になります。従業員の雇用を維持するためには、グループ内企業や取引先企業にとどまらず、グループ外の企業への出向も必要となります。センターが設立された当時は、急激な円高が進行し、重厚長大系の輸出産業を中心に高水準の雇用過剰の状態にあったことから、雇用を維持するための在籍型出向支援を行う専門機関として当センターが設立されました。
その後、バブル経済の崩壊を経て製造業を中心とする多くの大企業では、人員過剰となった従業員の雇用を維持せず、早期退職募集を行う傾向が顕著になりました。結果、センターが取り扱う出向事案は減少する一方、退職を余儀なくされる従業員の再就職=移籍の支援にセンター事業の軸足が移ることとなります。
2010年代の後半になると、アベノミクスによる経済効果などにより多くの企業の生産活動は活発となり、一時的な雇用調整のための出向は更に減少しましたが、2020年以降、新型コロナウィルス感染症の影響が拡大するにつれて、航空業・鉄道業や旅行業、宿泊業、娯楽業、外食チェーンなどの多岐にわたる業種で経済活動が停滞することとなりました。 一方で外出抑制に伴い小売業や食料品製造業などが活況となり、自動車部品や機械器具などの一部の製造業の生産活動も高い水準で推移していました。このような背景から、雇用過剰となった企業から雇用が不足する異業種の企業への在籍型出向のニーズが高まり、センターが支援する出向のあっせん実績は大きく伸びることとなったのです。
また、コロナ禍では大きな影響を受けた中小企業が、雇用を維持するために一時的に従業員を出向させるケースも増加しました。多くの中小企業は、コロナ禍前でも必要な人員が確保できず苦慮していたことから、従業員を一度解雇してしまうと、新たに従業員を雇用するのが難しいことは明らかであり、今の従業員の雇用を何とかして守りたいという意図が大きく作用したものと考えられます。
センターとしては、企業規模や業種にかかわりなく、出向として送り出す企業に対して出向を受け入れていただく企業をあっせんすることにより、双方の企業の人材ニーズに応えています。
◆産業雇用安定センターの移籍支援
離職を余儀なくされる従業員の再就職支援については、企業からセンターにご依頼いただくと、センターは在職中から支援に着手し、離職後も1年にわたって再就職支援を行います。よくハローワークとセンターの再就職支援の違いについて質問を受けますが、ハローワークは、失業された方や求職活動を行う方などが広く利用できます。一方、センターの場合は、まず企業からの支援依頼が前提で、その後個々の従業員に対して在職中から再就職支援を行うという点が異なります。
離職を余儀なくされる従業員の方は、家族のことや将来の生活設計に大きな不安を抱えることとなります。在職中の早い段階から再就職活動を行うことにより、新たな職場が決まることで、従業員の不安も大きく軽減することとなります。
ところで、企業が成長発展を続けるためには、構造改革は避けて通れないことは言うまでもありません。企業が自らの新陳代謝を進める上で、経営資源の重点化や、それに伴う人員構成を是正するために、主に40歳代以上の従業員に対して早期退職募集を行う場合が少なくありません。近年、経営状態に問題がない企業であっても、将来を見越して従業員の年齢構成の是正のための所謂「黒字リストラ」を行う企業も増えてきました。
企業が早期退職募集を行う場合、割増退職金を特別損失として計上するとともに再就職支援会社に従業員のセカンドキャリア支援を依頼するための費用も負担するのが一般的です。また、有料の再就職会社の利用と並行して、センターにも再就職支援の依頼のご連絡をいただければ、センターは無料で在職中からの再就職支援を行うとともに、場合によっては再就職支援会社とも協力しながら支援を進めます。
これまで長く企業に貢献してこられた大切な従業員の方々に次のステップに進んでいただくためのツールのひとつとして、全国47都道府県にあるセンターを活用していただければと考えています。
次回は、高齢者のための「キャリア人材バンク」についてご紹介いたします。
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- 2023/10/26
- お知らせ 定年後研究所 News Letter #4
今期4回目の配信となる、定年後研究所News Letterは、定年前後期のキャリアチェンジに失敗するひとの特徴を池口所長に考察していただきました。
大企業の中高年社員で「キャリアチェンジ」に失敗するひととは
最近、企業の人事担当者から、立て続けに類似のご相談をいただいた。
いわく、
「50代を対象に希望者制のキャリア研修を企画したが、手をあげる社員が少ない」
「再雇用以降のキャリア開発を促しても、自分の将来キャリアと向き合おうとしない」
「自身のキャリアと向き合うためにロールモデルを示したい」
「多様なキャリアを歩み、50~60代以降もイキイキと活躍を続ける社外のロールモデルに講演をお願いしたい」
「キャリアチェンジの成功例だけでなく失敗例も転ばぬ先の杖として示したい」
おおよそ、このような具合である。
成功例のロールモデルについては、これまでにも定年後研究所で数多くの取材を実施し、当ニュースレター(2023.5.10号)や、拙書『定年NEXT』(廣済堂出版刊2022.4.27)でも紹介してきた。一概には言えないが、役職定年や再雇用への移行、早期退職勧奨などのキャリア上の転機や心の内面の葛藤を乗り越えてきたひとが、働く意味合いを見つめ直し、自分が提供できる付加価値や強みを言語化していく紆余曲折のプロセスを踏むことで、ようやく、新しい環境や異なったフィールドで必要とされる喜びを感じられるようになる。結果65歳以降もやりがいを持って仕事を続けている。というのが最大公約数的なシナリオと言える。
一方、失敗例のロールモデルについては、取材対象を見つける困難性や、仮に見つけたとしても本心を語ってもらえない現実があり、小生も課題意識はあるもののインタビューはできていない。そこで、過去の先行研究を紐解いていくと、格好の書籍に出会うことができた。
『~成功・失敗100事例の要因研究から学ぶ~中高年再就職事例研究』(中馬宏之監修・キャプラン研究会編:東洋経済新報社 2003)。本書は、大手企業の中高年社員を対象に中小・新興企業への転職を促進するとの文脈の中で、当時のキャプラン研究会メンバー企業が、中高年社員のセカンドキャリアの成功を願って、各社で発生した成功例・失敗例を持ち寄り、その要因分析と普遍化にチャレンジした貴重な財産と言える。
成功要因は紙面の関係で割愛するが、失敗要因も紹介している。本書では失敗要因を「キャリア要因」「人物要因」「意識改革要因」「受入会社要因」「(元)所属会社要因」に分類している。
キャリア要因では、「自分の役割や職責の理解が不十分」「仕事の進め方の違いに馴染めない」「問題指摘が先行し、不評を買う」など、新しい職場に馴染むための本人の努力不足がうかがえる。
人物要因では、「プライドばかり高く、謙虚さに欠ける」「心を開かない(逆に、心を開きすぎる)」「協調性・柔軟性に欠ける」など、そもそもの社会人としての基本姿勢に疑問符を付けざるを得ないものが挙げられている。
意識改革要因では、「中小企業の現実が理解できない」「古巣との比較ばかりする」「プロパー社員との人間関係作りが不十分」など、意識の切替えができていない様子が見えてくる。
また、本人の要因だけでなく、「求人姿勢がお手並み拝見的」「過剰な期待がある」「経営トップの個性が強い」などの受入会社に起因することや、「キャリアの棚卸が不十分」「事前教育不足(中小企業の特質など)」「人材の無理なはめ込み」などの(元)所属会社による要因も挙げられている。
この本を読み進める中で感じたことは、これらの要因は、同じ会社内での人事異動での失敗要因と内容が酷似しているということ。例えば、本社の中枢組織から現場への異動に際して、「エリート意識が満々」「腰掛け意識が見え見え」の着任挨拶でいきなりひんしゅくを買うケースは、多くの読者にとっても既視感のある光景ではないだろうか。
人事異動とキャリアチェンジが異なるのは、前者は同じ会社の中での失敗であれば、上司や人事部によるサポートや配属替えで修復も可能であること。しかし、中高年社員が人生をかけたキャリアチェンジで同じ失敗をすると取り返しがつかないことに発展するケースもあるだろう。
冒頭で紹介したように、最近、セカンドキャリア形成も視野に入れた中高年のキャリア研修や面談に本腰を入れる企業が増えてきていると感じている。それ自体は、定年後研究所も賛成であるし応援したい。
長年の功労者でもある中高年社員活躍とキャリア人生の充実を願われるのであれば、「研修や面談で得て欲しい気づき」を改めて整理し、自己理解作業や老後マネーのシミュレーションだけでなく、ロールモデルの設定や、自分を試し打ちする越境機会なども準備しておくと、本人が自身のキャリアビジョンを描きやすくなることを申し添えておきたいと思う。
【筆者略歴】
池口 武志(いけぐち・たけし)
一般社団法人定年後研究所 理事 所長
1986年 日本生命保険相互会社入社
本部リテール販売部門、人事、営業企画、契約管理、販売最前線等で長く管理職(部長、支社長など)を経験し、多様な職種の人材育成にかかわる。その間、オックスフォード大学 Diplomatic Studies修了。
2016年 研修事業も行う株式会社星和ビジネスリンクに出向
キャリア羅針盤の開発を統括。現在、同社取締役常務執行役員も務める。
2023年3月 桜美林大学大学院老年学修士課程修了
キャリアコンサルタント、消費生活アドバイザー、AFP、日本心理的資本協会理事、シニア社会学会会員
著書に『定年NEXT』(廣済堂新書 2022年4月)、『人生の頂点は定年後』(青春新書インテリジェンス 2022年10月)
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中高年層(40代後半~50代)の社員の支援策に
このような課題はありませんか?
人事部・総務部の方
- これまでの経験を活かしながら、
新たな能力の発揮の仕方や活躍の方法に気付いてほしい。 - 生涯現役時代のキャリア計画を支援したいが、
ちょうどいいプログラムが見つからない。 - 集合型のセミナーを実施することが難しい
(コスト面・密を防ぐ等の理由から)。
健康保険組合・福利厚生担当の方
- 65歳まで、心も身体も健康に働き続けてほしい。
- 介護やがんなど、仕事にも影響する、
人生の後半に起こりうる問題に備えてほしい。 - 加齢から来る衰えにうまく対処し、
前向きに仕事に取り組んでほしい。
キャリア羅針盤®︎の特長
キャリア羅針盤®︎は一般社団法人定年後研究所が、組織で働く中高年層を対象に、
今後の社会人人生を充実させることを目的とし、監修するラーニングシステムです。

中高年社員の活性化のための調査研究を行う、
「定年後研究所」が監修!
point.01
中高年層に特化!
人生100年時代の中間地点に位置する中高年層がその後のキャリアと人生を前向きに充実させるためのヒントを提供します。
point.02
気付きと行動変容を後押し!
短時間で学ぶ・覚えるのではなく、受講者自身がじっくり考えるプログラムです。気付きを促し、行動変容につなげることを最大の目的としています。
point.03
柔軟な受講形態!
プログラムの組み合わせは自由。1講座からフルパッケージまでご相談可能です。本格的なライフキャリア研修をeラーニングでいつでも・どこでも受講できます。
point.04
人事・福利厚生の業務を
バックアップ!
従業員の受講状況・入力データは管理部門の方が確認できます。
管理部門の方の手間を軽減しながら、中高年層の社員の再活性化が図れます。
講座内容
キャリア羅針盤®︎のプログラムは
「人生のプランニング」
「 仕事との両立」の
2つのカテゴリで構成されています。

キャリア形成支援
(ライフキャリア)
経験を土台にしながら自分と向き合い、その後の職業人生を充実させるためには何が必要かを考えます。従来、集合研修で行われていた本格的なライフキャリア研修をeラーニング化しました。

ビッグファイブラーニング
ビッグファイブと呼ばれる5つの性格因子から自分の傾向を診断。自分にとって2番目以降に強い因子を強化することで新たな能力を発揮し、活躍できるフィールドを広げられるよう促します。

いま職場に必要ながん教育
近年、中学・高校の学習指導要領にも盛り込まれる「がん教育」。生活習慣での予防、がん検診による早期発見の大切さなど、がんについて大人が知っておくべきことを短時間で学べる講座です。

まだ間に合う!脳のトレーニング
就労期間が長期化するなか、個々の健康管理はこれまで以上に重要です。この講座では、脳によい習慣を身につけ、脳を鍛えることでパフォーマンスを最大化させる方法をお伝えします。
【まだ間に合う!脳のトレーニング】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【まだ間に合う!脳のトレーニング】 (受講者) ...
【仕事に活かすマインドフルネス】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【仕事に活かすマインドフルネス】 (受講者) 呼...
【いま職場に必要ながん教育】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【いま職場に必要ながん教育】 (受講者) 運動不...
【マネープラン】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【マネープラン】 (受講者) 大まかには実施して...
【8コンテンツ】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【8コンテンツ】 (受講者) 人とコミュ二ケーシ...
【ライフキャリアプラン】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【ライフキャリアプラン】 (受講者) これまでキ...
【幸せな介護】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【幸せな介護】 (人事・総務関係の担当者) 非常...
【ビッグファイブ】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【ビッグファイブ】 (人材育成関係の担当者) 単...
プログラム監修
一般社団法人定年後研究所
人生100年時代のなかで、特に定年前となる50代以上の企業人・会社員のセカンドライフ支援・準備に向けた研究活動を行う。2018年の設立来、『定年3.0』や『50代シンドローム』といった概念を提唱し、各種メディアに取り上げられる。また、2019年には70歳定年に関する調査を実施し、研究結果を発表する等、社会や企業が抱える課題解決に役立つ情報発信を精力的に行っている。
運営 株式会社星和ビジネスリンク
キャリア羅針盤®は企業向け研修・セミナー企画、経営コンサルティング、業務代行を提供する株式会社星和ビジネスリンクが運営しています。当社はシニア世代のセカンドキャリアを支援するサービスの開発に力を入れています。
