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お知らせ
- 2022/06/21
- お知らせ 【和田秀樹氏 集中連載 3/4】「長寿時代への中高年からの備え」
第2回 異常値をたたく医療から、元気になるために「足す」医療へ
和田秀樹氏による「長寿時代への中高年からの備え」をテーマとした集中連載。2回目となる今回は「異常値をたたく医療から、元気になるために『足す』医療へ」と題して、中高年期以降、心身ともに元気に過ごすためのコツを教えていただきます。
中高年から高齢への医学的な備えというと、多くの人がメタボ対策をはじめとする「生活習慣病」対策を思い浮かべるだろう。
確かに、心筋梗塞の予防であれ、脳卒中の予防であれ、体重を落とし、血圧や血糖値やコレステロール値を下げることが常識のようになっているし、これらの値が高いと医師に生活指導を受け、多くの場合、薬を処方されることになる。
ただ、長年高齢者を専門とし、アンチエイジング医療を行っていると、むしろこれらのことが逆に人々の元気を落とし、早く老け込ませるのではないかと思うようになった。
実際、日本で行われた大規模な住民調査では、40歳の時点でやや太めの人(BMI25~30)がやせ型の人より6~8年長生きしているし、各種の追跡調査でもコレステロールも正常より高めの人のほうが死亡率は低い。
血圧や血糖値のコントロールについても欧米と違って大規模調査のデータがないから、本当にそれを下げたほうが長生きできるのかはわからないとしかいいようがない。
確かに欧米の大規模比較調査のデータでは、血糖値はやや高め、血圧は下げたほうがいいというデータがでている。
ただ、これが日本にあてはまるかどうかはわからない。
というのも、欧米のほとんどの国では死因のトップが虚血性心疾患だからだ。
アメリカでは、がんの1.7倍も心筋梗塞で亡くなっている。
ところが日本では心筋梗塞で亡くなる方は、がんの10分の1だ。
血圧や血糖値が、がんで死ぬ確率に影響を及ぼすかどうかはわからない。
しかし、一般的に血圧や血糖値を薬で下げるとぼんやりしたり、フラフラする人は多い。
人工的にその人にとって低血圧や低血糖の状態を作っているから頭がシャキッとしないのだろう。
この不快感が免疫力を落とす可能性があるから大規模調査をやらないと日本で死亡率を下げるかどうかがわからないのだ。
一般的に高齢者になると「高い害」より「低い害」のほうが大きくなる。
動脈硬化で血管の壁が厚くなると低血糖で失禁したり意識がおかしくなるということは珍しくない。
塩分を控えすぎて低ナトリウム血症を起こすと意識障害が起こることも多い。
こういう意識障害が高齢者の起こす事故の原因ではないかと私は考えている。
ニュースでも、動体視力が落ちて飛び出してきた子供をはねたという事故は滅多に報じられないが、普段暴走や逆走をしない人がそれをやるというケースが多いからだ。
なんらかの意識障害があると考えるほうが自然な気がする。
いずれにせよ、高齢者は栄養状態がいい人のほうが若々しい。
中高年の人も食欲旺盛な人のほうがエネルギッシュだ。
欧米では、若さや健康を保つためのサプリメントが盛んに売られている。
私も足りないものを補うために複数のサプリメントを常用している。
サプリメントの多くは、今より元気になることを目標にしている。
医者の出す薬は元気になることより異常値をたたくことを目標にしている。
これがどうしても活力を落としがちだ。
もう一つ足したほうがいいと思うのはさまざまなホルモンだ。
歳をとるほど、多くのホルモンの分泌が悪くなる。
私はそれを足すことでかなり若返ることができるし健康的になると信じている。
女性なら女性ホルモンが減るわけだが、それを足してあげると肌がみずみずしくなるし、骨粗しょう症のリスクが減ることが知られている。
また、成長ホルモンは歳をとるほど減ることが知られているが、これも補充してあげると、新陳代謝がよくなるし、筋肉がつきやすくなる。要するに体力が保たれるのだ。
それ以上に大切だと私が考えているのが男性ホルモンだ。
最近、研究が進むにつれ、ただの性欲を保つホルモンでないことがわかってきた。
男性ホルモンは、脳内のアセチルコリンという伝達物質の分泌を刺激するので、このホルモンが減ると記憶力が落ちる。
また性欲だけでなく、意欲が落ちることもよく知られた事実だ。
そして、男性ホルモンが減ると女性に関心がなくなるといわれてきたが、人への関心が落ちるらしく、人付き合いがおっくうになってくる。
実は、閉経後の女性はむしろ男性ホルモンが増えることがわかっている。
だから、女性は歳をとってから社交的になったり、活動的になる人が多い。
ところが男性はそれが減り続けるので、「ぬれ落ち葉」となってしまうのだ。
さらにいうと、男性ホルモンが減ると同じだけ肉を食べ、同じだけ運動をしても筋肉がつかず、脂肪がつきやすくなる。
男性ホルモンを維持するために、肉を食べ、亜鉛(牡蠣やニンニクなど精がつくとされる食べ物に多く含まれる)をとり、運動をするのが大切なのだが、それでも足りなければ補充すればかなりの若さと体力が保たれる。
これは相当効果が自覚できるもののようで、私のクリニックでは最もリピーターが多い治療である。
いずれにせよ、中高年から元気で意欲的であることを維持していくのなら、検査結果に一喜一憂するより足りないものを足していくという発想の転換が必要だと私は信じている。
【筆者略歴】
和田秀樹(わだ・ひでき)
和田秀樹こころと体のクリニック院長、精神科医。
1960年大阪市生まれ。
1985年東京大学医学部卒業。
1988年に日本に3つしかない高齢者専門の総合病院浴風会病院勤務以来、30年以上にわたって高齢者医療にかかわる。
教育関連、受験産業、介護問題、時事問題など多岐にわたるフィールドで精力的に活動し、テレビ、ラジオ、雑誌など様々なマスメディアにもアドバイザーやコメンテーターとして出演。
現在、国際医療福祉大学大学院赤坂心理学科特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長などを務める。
【著書】
『40歳から一気に老化する人、しない人 ─足りないものを足す健康法のすすめ』(プレジデント社 2022年)、『「感情の老化」を防ぐ本』(朝日新聞出版 2019年)、『年代別 医学的に正しい生き方─人生の未来予想図』(2018年 講談社)、『五〇歳からの勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2016)他多数。
◎ 星和ビジネスリンクは、現役世代が定年後の人生を豊かに過ごすための調査研究を行う機関として、「一般社団法人 定年後研究所」を設立しました。
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- 2022/06/14
- お知らせ 【和田秀樹氏 集中連載 1回目】「長寿時代への中高年からの備え」
第1回 前頭葉が衰える前に準備をする必要性
今回は、テレビ、ラジオほか、様々なメディアでアドバイザーやコメンテーターとしてもご活躍の和田秀樹氏(「和田秀樹こころと体のクリニック」院長)に「長寿時代への中高年からの備え」をテーマとして4回にわたってお話しいただきます。
第1回は、「前頭葉が衰える前に準備をする必要性」と題して、40代・50代から「脳(前頭葉)」を上手に使って脳の機能低下を防ぐことの重要性についてお届けします。
高齢者を専門とする精神科医となってから34年、アンチエイジングを行うクリニックを趣味と実益をかねて開業してから12年になるが、そういう私にとってコロナ禍はいろいろと意味深いものであった。
2年にわたる自粛生活で、老け込む人、足腰が衰える人、認知機能が低下する人が、大量に出現した。
私の患者さんでも、感染を恐れて外に出るのを怖がり、薬を家族が取りにくるというケースが少なくないのだが、家族に話を聞いてみるとすっかり歩けなくなった、認知症が進んでしまったなどという話をよく聞く。
実は、高齢者の在宅医療など、多くの高齢者を診ておられる医師の方からは同じような話を聞くことが多い。私の長年の高齢者臨床の実感では、高齢者だからと言って、一様に歩行機能や認知機能が衰えるわけではないが、かなり壮健な高齢者でも、使わなかったときの衰えは激しい。
若い頃であれば、スキーで骨を折って一か月くらい寝込んでしまっても骨がつながり、歩いてよくなった翌日からほぼ普通のレベルで歩けるものだが、高齢者の場合、風邪をこじらせて寝込んでしまうとリハビリをしないと歩けなくなってしまう。
あるいは、入院して天井を眺めるような生活を一か月も続けているとボケたようになってしまう。
そういうことを前前から感じていたのだが、皮肉にもコロナ禍でそれが実証された気がする。
実際のところ、歩かないと歩けなくなるし、頭を使わないとボケたようになってしまうことは高齢者自身が実感しているようだが、わかっていても意欲が低下しているため、やらないということが意外に多い。
この意欲低下に大いに関与しているのが前頭葉の老化である。
脳の画像(MRIやCT)で見る限り、脳の前頭葉の部分は40代くらいからじわじわと委縮してくる。
その頃から意欲低下(少なくとも若い頃と比べて)が始まる人が少なくないのは、おそらくは「前頭葉の委縮=機能低下」と関連しているのだろう。
実は、この前頭葉は創造性や新奇なものへの対処能力とも関連している。
以前、定年後起業のコンサルタントの人にこんな話を聞いたことがある。
定年後に、時間ができたからといって起業を一から始めようとしてもたいてい成功しない。
うまくいくのは、40代くらいから準備をしていた人だと。
実際は、40代から脳の萎縮が目に見えるようになるが、50代でもそれほど萎縮しているわけではない。
おそらくは、この手の準備が早いにこしたことはないのは確かなようだ。
40代で乗り遅れたとしても、50代に始めるほうがいいというのは経験的に感じている。
これは前頭葉の老化を考えると納得できる話だ。
40代と定年後では、意欲も創造性も全然違う。
40代なら夢を膨らませて、忙しい会社での時間を縫ってでも、起業の準備を進めていける意欲がある。
そして、定年を待って、すぐにスタートできる。
ところが定年後では、その意欲がかなり衰え、ちょっと困難が見えてくると「ま、いいか」とあきらめてしまう。
また創造性も衰えるので、これをやったら儲かる、うまくいくというプランもなかなか出てこない。これでは成功はおぼつかないだろう。
定年後に仕事でなくても、趣味をもっていないと老け込むのが早いし、時間を持て余すので、趣味を探そうとするのでも、40代から探すのと、定年後に時間ができてから探すのでは、うまくいく確率がだいぶ違うはずだ。
40代なら、あれこれとチャレンジして、これがダメならあれという風にトライし続けているうちに自分に合った面白い趣味が見つけられることだろう。
定年後は、その趣味をできた時間で思い切り楽しめばいい。
ところが定年後であれば、2,3トライしてダメなら、自分は趣味の余生は向いていないとあきらめがちだ。
ということで、定年後のさまざまな準備をするなら、前頭葉が衰える前にしておくにこしたことはない。
40代と定年後の中間にある50代の人には定年前に始めようということを自覚してもらえると幸いである。
ただ、前頭葉の老化を防ぐすべがないかというと、私はあると信じている。前頭葉を使えばいいのだ。
実は、人は意外に前頭葉を日頃使っていない。
読書をしても言語を司る側頭葉を使うだけだし、計算やある程度難しい数学の問題を解いていても頭頂葉しか使っていない。
昔、前頭葉を切り取るロボトミーという手術があったが、知能指数は一点も落ちなかった。
そのため、それを考案したエガス・モニスという医学者はノーベル賞をもらっている。
前頭葉は、何かを創造するときとか、新奇なものに対応するときに使うとされる。
前頭葉が老化してくると、新奇なものよりルーティンを好むようになる。
行きつけの店にしか行かなくなったり、同じ著者の本ばかり読むというようになるのがサインだ。
前頭葉を使うということであれば、可能なら小説を書いたり、俳句をひねったりと創造的なことにチャレンジするのが一番だ。
ただ、あまりにハードルが高いので、あえて行ったことのない店にチャレンジしたり、別の著者の本を読んだりすることでも十分だと私は考えている。
日本人は、大学でもあまり前頭葉を使う教育をしないし、仕事でも上に言われたことができていたらよしという風潮が強い。
ちょっと前頭葉を使ってみるだけで、ほかの人より前頭葉機能だけは勝つということは難しいことではないのだ。
まだまだ続く長い人生のためにもぜひチャレンジしてほしい。
【筆者略歴】
和田秀樹(わだ・ひでき)
和田秀樹こころと体のクリニック院長、精神科医。
1960年大阪市生まれ。
1985年東京大学医学部卒業。
1988年に日本に3つしかない高齢者専門の総合病院浴風会病院勤務以来、30年以上にわたって高齢者医療にかかわる。
教育関連、受験産業、介護問題、時事問題など多岐にわたるフィールドで精力的に活動し、テレビ、ラジオ、雑誌など様々なマスメディアにもアドバイザーやコメンテーターとして出演。
現在、国際医療福祉大学大学院赤坂心理学科特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長などを務める。
【著書】
『40歳から一気に老化する人、しない人 ─足りないものを足す健康法のすすめ』(プレジデント社 2022年)、『「感情の老化」を防ぐ本』(朝日新聞出版 2019年)、『年代別 医学的に正しい生き方─人生の未来予想図』(2018年 講談社)、『五〇歳からの勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2016)他多数。
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- 2022/06/02
- お知らせ 【戸田久実さん 特別寄稿】「パワハラとコミュニケーション」
パワハラとコミュニケーション
「改正労働施策総合推進法」が施行され、令和2年6月から大企業で、令和4年4月には中小企業でもパワーハラスメントを防止するための取り組みが義務付けられました。
本号では、一般社団法人アンガーマネジメント協会理事で、コミュニケーションの指導でも有名な戸田久実さんに、パワーハラスメントについて、「中高年管理職へのアドバイス」「役職定年後のコミュニケーション」を切り口にお話をいただきます。
近年、管理職の方々、40代後半以上の方々から研修先でご相談をいただくことの中に、「パワーハラスメントにならないよう、どう部下を指導したらいいのか」「自分とは世代が違う、価値観が異なる若手と、どうコミュニケーションをとればいいのか」という内容が多くなってきました。
パワハラ防止法が施行されたこと、また時代の変化とともに価値観が多様化し、そのような声が多くなったと考えます。
パワーハラスメントの要因の中には、パワーハラスメントへの理解不足、コミュニケーション不足もありますが、個々の価値観、世代による価値観の違いが受け入れられない、という要因もあります。ということで、今回は価値観に相違のある相手とのコミュニケーションをテーマにお伝えいたします。
皆さまは「べき」という言葉を使うこと、頭に思い浮かべることはないでしょうか。
「会議では必ず発言すべき」「トラブルが発生したら、報告すべき」「歩きスマホはすべきではない」など、職場はもちろん、公共の場、家庭など、さまざまな場面の「べき」があることと思います。
「べき」は、自身の理想、願望、ゆずれない価値観を象徴する言葉です。
その「〜あるべき」「〜するべき」が、そのとおりにならない、守ってもらえないときに怒りが生まれます。怒りを感じること、怒ること自体は悪いことではありません。
人間にとっては、嬉しい、悲しいなどの他の感情と同じく自然な感情であり、なくすことはできません。
ただ、他の感情よりもエネルギーが強いので、「ついカッとなって…」という言葉もあるように、振り回されてしまうことがあります。
イラっとしたときについ、余計なことを言ってしまったり、相手をやり込めてしまったり、パワハラ問題にまで発展してしまう可能性もあるので、要注意です。
そのようなことにならないためにも、怒りの元になる「べき」の注意点について振り返ってみませんか。
自身の大切な価値観に関わることですから、どのような「べき」をもっていてもかまいません。しかし、次の3点については知っておいてほしいものです。
(1)正解・不正解はない
長年信じてきた「べき」もあるでしょうから、大切な「べき」だと思うことは問題ありません。
ただし、価値観が多様化している今、人それぞれの価値観、「べき」があり、違いがあるということを知っておく必要があります。
自身の「べき」がそのとおりにならなかったときに、次のような言葉を思い浮かべたり、使っていたら要注意です。
「普通、こうするよね」
「このくらい常識だよ」
「当然、〜するよね」
「これが当たり前!」
「わたしの言っていることが正しいんだ」など。
自分の当たり前と相手にとっての当たり前、自分の常識と相手の常識とが違う可能性があります。人それぞれ価値観の違いはあるものです。
このように言われてしまうと、「頭ごなしにやり込められた」と感じる人もいるでしょう。
(2)人によって「程度」が違う
同じような「べき」という考えをもっていたとしても、どの程度のことを望むのかは人によって違います。わたしたちは抽象的な言葉で「べき」を表現することがあります。
たとえば、
「ちゃんと挨拶をすべき」
「しっかり計画を立てるべき」
「メールは早めに返信すべき」
「相手の立場に立って考え行動すべき」
このような表現です。
「ちゃんと」「しっかり」というのはどの程度のことを意味しているのか、どのような行動をすればいいのか、「早めに」というのは具体的にいつまでのことなのか、人によって認識が違う可能性があります。
「ちゃんと確認してって言ったよね?」「はい、しました」「いや、ちゃんとしていない」というすれ違いが起こることも想像できるでしょう。
(3)時代、環境によって変化する
時代の変化も激しく、その変化によって価値観、「べき」も変わります。同じく環境の変化でも変わるでしょう。
たとえば、働き方に関わる価値観も時代の流れによってかなり変化しました。
かつては「育休は女性がとるべき」「営業は足で稼ぐべき」「出世を望むべき」「上司が誘う飲み会には参加すべき」という「べき」を当たり前と捉える時代もありましたが、今では当たり前とはいえなくなってきました。
さらに、世代が違えばこれまで生きてきた環境も違うため、「べき」が異なり、自身の「べき」が通用しないこともあります。
新入社員の中には固定電話を使ったことがない、誰かの電話を取り次いだことがない、という方々もいます。
1人1台の携帯電話をもつ時代に育った世代のため、他者の電話に出るべきではない、という感覚の人もいます。「新人でも電話の取り次ぎはできるべき」が通用しなくなり、また、「仕事は上司の背中を見て覚えるべき」もかなり前から通用しなくなってきました。
以上のことから、どのような「べき」をもっていてもいいのですが、世代が違う、これまで築いてきたキャリアが違うとなると自身と相手の価値観、「べき」が違い、どの程度望むかも違う可能性があるということを心に留めつつコミュニケーションをとることが必要になってきました。
自身の「べき」に固執して、「前は…」と以前のことを語りはじめてしまい、相手の考えに耳を傾けられず、ぎくしゃくしてしまった。
ついイラっとして、「こうあるべきだ」を相手に押し付けてしまいパワハラ問題にまで発展してしまったというケースも耳にします。
「どちらが正しいのか」ということを突き詰めようとするのではなく、違いを知り、「べき」の違いをうめていく対話をするためのポイントは次のとおりです。
自身の「べき」をわかってほしいときは、「今後〜してほしい」「こういうときは、〜してほしい」というように、リクエストとして伝えることをおすすめしています。
もちろん、相手と共通認識になるよう具体的な表現で伝えることがポイントです。
さらには、相手の「べき」にも耳を傾ける姿勢も重要で、たとえ自身の「べき」と違う考えや意見を耳にしたとしても、いきなり否定したり遮ることなく、まず同意はできなくても理解を示すことから対話をはじめていたかを振り返りませんか。
「でもね…」「いやいやこういうときは…」と否定せず、「〜と思っているんだね(という考えだね)」と受けとめたうえで、「どうしてそう思う?」と引き出して聴いてみたり、自身も、「わたしは、〜いうときは、〜してほしいと思っている。なぜかというと…」と、なぜそう考えているのかという理由とともに伝えるというやりとりです。
「なぜ〜すべきなのか」「何のために〜してほしいのか」その理由や背景をお互いに共有しつつ、それぞれの「べき」の違いの溝をうめていく…というイメージです。
「自分たちが若かりし頃に受けた指導の仕方、関わり方と大いに違う!」という声もあります。以前ご自身が受けた指導が間違っているということでもありませんし、否定することもありません。変化が激しい近年だからこそ、アップデートしませんか。
【筆者略歴】
戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 理事
立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。
研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任し、登壇数は4,000 回を超え、指導人数は20 万人に及ぶ。その実績による豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、新入社員から管理職まで幅広い対象に研修、講演を実施。多くの企業でわかりやすく、実践的な内容が好評を得ている。
近年は、講演・研修講師として全国で活躍する傍ら、大手新聞社主催のフォーラムへの登壇や、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアを通じてアンガーマネジメントやコミュニケーションの重要性を伝えるなど、活動の幅を広げている。
【著書】
『怒りの扱い方大全』(日本経済新聞出版社・2021年)、『アンガーマネジメント』(日経文庫・2020年)、『イラスト&図解 コミュニケーション大百科』(かんき出版・2019年)など多数。
中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され、累計25万部を超える。
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- 2022/05/30
- お知らせ 【新規連載 木村勝氏 第4回】 求められるシニア社員になるための中高年社員心得 【後編】
求められるシニア社員になるための中高年社員心得 【後編】
先週配信した【前編】では、木村勝先生から仕事へのモチベーションを失ってしまう「シニア社員」が増えてしまう理由についてお届けしました。
本号では、「求められるシニア社員になるためのキャリアの考え方・準備」について解説いただきます。
5月11日配信の【前編】では、「なぜ働かないおじさんが量産されるのか」 について、その原因を考えてみました。
今回は、「働かないおじさん」 と呼ばれることなく求められるシニア社員として活躍するための処方箋を示してみたいと思います。
前回、「働かないおじさん」が生まれてくる理由として、シニア社員が役職定年や定年年齢到達を長い会社生活でのキャリアのゴールと考えてしまうことを理由の一つとして説明させていただきました。「収入」と「役職」を働くエンジンとして馬車馬のように会社人生を歩んできたビジネスパーソンにとって、ゴールの喪失はやる気の喪失につながります。
終身雇用を前提にするとキャリアというものは人生一度きりです。
しかしながら、これからの「人生100年・80歳現役時代」には、「役職定年」「定年」到達をキャリアの重要な節目として認識し、ファーストキャリアからセカンドキャリアへの新たなスタートを切る必要があります。
もちろん、今の会社に継続して勤務する方が多いと思いますが、その場合でもこうした節目をスルーすることなく一度立ち止まって、じっくり自分のキャリアを考えることが重要です。
「まわりの仲間もそうだから」 「特にやりたいこともないから」 と流されることなく、「キャリアは自分で決める」 という自己決定意識がその後の活躍に大きく影響します。
キャリアの方向性をきちんと持ったシニア社員は、若手にも魅力的で目指すべきロールモデルです。若手に揶揄される存在ではなく、きちんと自身のキャリアの方向性を持ったシニア社員になることは、求められるシニア社員の条件です。
続いてシニア人材活躍に関する調査研究からヒントを探ってみたいと思います。
一般社団法人 企業活力研究所が2020年3月に公表した 「これからのシニア人材の活躍支援の在り方に関する調査報告書」という報告書があります。
この報告書では、個人アンケート、インタビュー、企業での事例などを踏まえ、60歳以前社員(主に50代)に対して、「企業が取り組むべきこと」 と 「シニア社員本人が取り組むべきこと」の2方向から提言していますが、ここでは、「シニア社員本人が取り組むべきこと」 を紹介いたします。
報告書で提言する取り組みは、(1)自らの強みを発揮できる新たな専門性やスキルを磨き続け、Employabilityを高める、(2)キャリアのオーナーシップを持ち、定期的にスキルの棚卸しやキャリアプランの検討を続ける、(3)会社一辺倒ではなく、職場以外での活動範囲を広げる、の3点です。
いずれも 早くからの自律的キャリアデザインとその実行が要であり、以前このコラムでもテーマとして取り上げた 「変身資産の準備」 にほかなりません。
この調査からも、会社任せのキャリア形成から自分のキャリアは自分で決める重要性が指摘されています。
筆者は、シニア社員に求められる力として次の3つの力があると考えています。
(1)超実務力(一気通貫)と(2)寄り添い力(傾聴力)と(3)ネットワーク力(人脈)です。
(1)超実務力とは、管理としてのマネジメント業務がなくなり、今までの経験で培ってきた実務遂行力です。
セカンドキャリアを見据えて自分の専門領域の実務力を再度磨き上げておかなければなりません。
実務ができずに口だけのシニアは必要とされません。
(2)寄り添い力も重要です。
「サントリーフーズ株式会社」には、「TOO」 という役職があります。「隣のおせっかいおじさん」の略称です。
忙しすぎて目が行き届かない管理職と若手社員の間に入り、個人が抱える問題を早期に摘み取る役目や人材育成の後押しもしています。
こうした役割を果たすためのポイントは、「自分が、自分が」 と前に出ていくのではなく、一歩下がって若手・ミドルの話をよく聴き、彼らに寄り添うようにサポートしていくスタンスです。
肩書も権限もなくなった、人の話を聞けないパワハラ系シニアには誰もついていきません。
(3)ネットワーク力(人脈)も重要です。
長いキャリアで培った人的ネットワークや人間関係力をベースに顧客開拓や組織内で 「ノウフー」 「ノウハウ」 の達人となり、若手に人脈を紹介、人間関係での問題を調整する存在です。
最後に求められるシニア社員になるために必要なこと(=熟年力)が学べる映画をご紹介させていただきます。
日本では2015年に封切られた映画 「マイ・インターン」です。
ロバート・デ・ニーロが演じるシニアが若い女性経営者をサポートします。
映画から学ぶことができるのは、「熟年力の発揮」です。
□新しいことに挑戦し続ける
□頼まれたら何でも気軽に引き受ける
□自ら仕事を見つけて働く
□アドバイスは短く、控えめに話す
□昔の話を聞かれない限りしない
□自分のスタイルを大切にする
□清潔で身ぎれいにしている 等々
求められるシニア社員になるためのヒントが満載です。
自分で自分のキャリアを早めから設計する自律的キャリアデザイン力とそれを実行する3つの力(超実務力・寄り添い力・ネットワーク力)を着実に学び磨き続けること。
この2つが本コラムのテーマである 「求められるシニア社員になるための中高年社員心得」 です。
【筆者略歴】
木村 勝(きむら・まさる)
一橋大学社会学部卒業、大手自動車メーカーの人事部門を経て、独立人事業務請負「リスタートサポート木村勝事務所」及び「行政書士木村勝事務所」開設独立開業。
30年を超える人事経験を通じて多くのシニア世代ビジネスパーソンのキャリアチェンジのサポートを行っている。
【著書】
『ミドルシニアのための日本版ライフシフト戦略』(共著・WAVE出版刊・2021)
『働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書』(朝日新聞出版刊・2017)、
『知らないと後悔する定年後の働き方』(フォレスト出版刊・2019)など
【所属】
リスタートサポート木村勝事務所/行政書士木村勝事務所(代表)、国立大学法人 電気通信大学(特任講師、非常勤)、ビューティフルエージング協会(事務局)、東京都行政書士会杉並支部(会員)、インディペンデントコントラクター協会(会員)
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- 2022/05/27
- セミナー 【好評につきキャリアセミナー録画配信決定!オンデマンド配信】人事担当者様必見!
シニアまでの雇用に備えるためのミドルエイジに必要な「学び」と「気づき」
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お申込みをいただきますと、受付確認メールが自動で配信されます。
セミナーへの詳細・お申込みはこちらから
※お申し込みいただきましたら、視聴用URLをメールでご返信します。
2022年6月13日(月)~6月17日(金)の期間ご視聴できます。
上記期間外は弊社HPが表示され、ご視聴できませんので、ご了承ください。
<開催概要>
■配信日時
2022年6月13日(月)~6月17日(金)
※オンデマンド配信のため、ご都合に合わせて視聴いただけます。
■プログラム
シニアまでの雇用に備えるためのミドルエイジに必要な「学び」と「気づき」
■講師
第一部:得丸英司氏(定年後研究所特任研究員/日本FP協会 特別顧問
第二部:星和ビジネスリンク セカンドキャリア支援事業部門
■参加費
無料
■視聴形式
Vimeo
【講師略歴】
得丸 英司(とくまる・えいじ)
大手保険会社で25年にわたり法人・個人分野のライフコンサルティング部門に従事。
日本FP協会常務理事(現特別顧問)、慶應義塾大学大学院講師、定年後研究所初代所長などを歴任。
【著作】
『「定年後」のつくり方』(廣済堂新書)
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人事部・総務部の方
- これまでの経験を活かしながら、
新たな能力の発揮の仕方や活躍の方法に気付いてほしい。 - 生涯現役時代のキャリア計画を支援したいが、
ちょうどいいプログラムが見つからない。 - 集合型のセミナーを実施することが難しい
(コスト面・密を防ぐ等の理由から)。
健康保険組合・福利厚生担当の方
- 65歳まで、心も身体も健康に働き続けてほしい。
- 介護やがんなど、仕事にも影響する、
人生の後半に起こりうる問題に備えてほしい。 - 加齢から来る衰えにうまく対処し、
前向きに仕事に取り組んでほしい。
キャリア羅針盤®︎の特長
キャリア羅針盤®︎は一般社団法人定年後研究所が、組織で働く中高年層を対象に、
今後の社会人人生を充実させることを目的とし、監修するラーニングシステムです。

中高年社員の活性化のための調査研究を行う、
「定年後研究所」が監修!
point.01
中高年層に特化!
人生100年時代の中間地点に位置する中高年層がその後のキャリアと人生を前向きに充実させるためのヒントを提供します。
point.02
気付きと行動変容を後押し!
短時間で学ぶ・覚えるのではなく、受講者自身がじっくり考えるプログラムです。気付きを促し、行動変容につなげることを最大の目的としています。
point.03
柔軟な受講形態!
プログラムの組み合わせは自由。1講座からフルパッケージまでご相談可能です。本格的なライフキャリア研修をeラーニングでいつでも・どこでも受講できます。
point.04
人事・福利厚生の業務を
バックアップ!
従業員の受講状況・入力データは管理部門の方が確認できます。
管理部門の方の手間を軽減しながら、中高年層の社員の再活性化が図れます。
講座内容
キャリア羅針盤®︎のプログラムは
「人生のプランニング」
「 仕事との両立」の
2つのカテゴリで構成されています。

キャリア形成支援
(ライフキャリア)
経験を土台にしながら自分と向き合い、その後の職業人生を充実させるためには何が必要かを考えます。従来、集合研修で行われていた本格的なライフキャリア研修をeラーニング化しました。

ビッグファイブラーニング
ビッグファイブと呼ばれる5つの性格因子から自分の傾向を診断。自分にとって2番目以降に強い因子を強化することで新たな能力を発揮し、活躍できるフィールドを広げられるよう促します。

いま職場に必要ながん教育
近年、中学・高校の学習指導要領にも盛り込まれる「がん教育」。生活習慣での予防、がん検診による早期発見の大切さなど、がんについて大人が知っておくべきことを短時間で学べる講座です。

まだ間に合う!脳のトレーニング
就労期間が長期化するなか、個々の健康管理はこれまで以上に重要です。この講座では、脳によい習慣を身につけ、脳を鍛えることでパフォーマンスを最大化させる方法をお伝えします。
【まだ間に合う!脳のトレーニング】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【まだ間に合う!脳のトレーニング】 (受講者) ...
【仕事に活かすマインドフルネス】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【仕事に活かすマインドフルネス】 (受講者) 呼...
【いま職場に必要ながん教育】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【いま職場に必要ながん教育】 (受講者) 運動不...
【マネープラン】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【マネープラン】 (受講者) 大まかには実施して...
【8コンテンツ】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【8コンテンツ】 (受講者) 人とコミュ二ケーシ...
【ライフキャリアプラン】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【ライフキャリアプラン】 (受講者) これまでキ...
【幸せな介護】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【幸せな介護】 (人事・総務関係の担当者) 非常...
【ビッグファイブ】
eラーニングをトライアルいただいたお客様の声です。 【ビッグファイブ】 (人材育成関係の担当者) 単...
プログラム監修
一般社団法人定年後研究所
人生100年時代のなかで、特に定年前となる50代以上の企業人・会社員のセカンドライフ支援・準備に向けた研究活動を行う。2018年の設立来、『定年3.0』や『50代シンドローム』といった概念を提唱し、各種メディアに取り上げられる。また、2019年には70歳定年に関する調査を実施し、研究結果を発表する等、社会や企業が抱える課題解決に役立つ情報発信を精力的に行っている。
運営 株式会社星和ビジネスリンク
キャリア羅針盤®は企業向け研修・セミナー企画、経営コンサルティング、業務代行を提供する株式会社星和ビジネスリンクが運営しています。当社はシニア世代のセカンドキャリアを支援するサービスの開発に力を入れています。
