星和Career Next2023 第1回公開セミナー
近未来 未曽有の労働力不足に
どのように備えるか?
講師:明治大学大学院 野田 稔(のだ・みのる) 教授
2023年6月20日(火)13:30~15:20
オンラインLive配信(Zoom)
明治大学大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
1981年一橋大学商学部卒業、野村総合研究所入社。
1987年一橋大学大学院修士課程修了。野村総合研究所経営戦略コンサルティング室長のちに部長。
2001年多摩大学経営情報学部教授、リクルート新規事業担当フェロー。
2008年4月より現職、リクルートワークス研究所 特任研究顧問を兼任。
著書:『中堅崩壊』(ダイヤモンド社)、『あたたかい組織感情』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。
登壇者インタビュー
近未来、日本企業で深刻な問題となることが予測されている「労働力不足」。
また、現在多くの企業で課題となっている「中高年層へのキャリア支援」。
第一部では、これらの課題解決のためにいま企業がすべきことについてミドルシニア
研究の第一人者である明治大学大学院 野田 稔教授にお話しいただきます。
研究のきっかけは、活力を失った
ミドルマネージャー
星和インタビュアー(以下、古畑):この度は弊社主催セミナーでの登壇にご了承いただきありがとうございます。
野田:期待に添えるよう、しっかりお話ししますね。
古畑:宜しくお願いします。
それでは、早速お話をうかがわせてください。ここ数年雇用期間の延長などから、多くのメディアでミドルシニア層の「キャリア自律」「リスキリング」などという言葉に注目が集まっていますが、野田先生がミドルシニアの研究をはじめられたのって、随分前でしたよね。たしか『中堅崩壊』が出版されたのが15年前、2008年だったように記憶しているのですが…
野田:研究をはじめたのは、もうかれこれ20年くらい前になりますね。
古畑:随分と先をみていらっしゃったのですね!でも、野田先生がミドルシニアの研究をはじめられたきっかけは何だったのですか?
野田:元々は、企業の中でのミドルマネジメントの問題がスタートで、ミドルマネジメントを担っている方々の活力が落ちている…、疲れている…、この問題を何とかしなくては、と考えたのです。ですから、当時はミドルシニアを年齢で区切っていたわけではなかったのです。
古畑:そうでしたか。
野田:研究をはじめた頃は、「ミドルマネジメント」という職責に疲れているのかと考えていたのですが、研究を進めていくうちに、ミドルマネジメントを担っている人の多くが役職定年や、その後の収入減、定年退職をリアルに感じる年齢になってきて、仕事に対するモチベーションが維持できなくなっていることがわかってきました。
古畑さんは、「雇用保蔵」という言葉をご存知ですか?
古畑:「雇用保蔵」ですか?
野田:「雇用保蔵」というのは、企業がどんどん成長している過程で、その時点では余剰人員と考えられている人も、会社が成長していけば戦力として働いてもらえる。だから、将来的な人材として雇用しておくというのが元々の考え方です。
古畑:なるほど、長期的視点から人材を意図的に抱え込んでおけば、他に先んじることができますね。
野田:ところが、既存の事業で企業が成長できない時代になると、これら雇用保蔵されている人を解雇することもできないため、しかたなく雇用し続けるというものに変化してきたのです。そして、その大部分がミドルシニア層。日本全体ではこのような人が100万人規模で存在すると言われています。
会社からすれば、働かないミドルシニアがただ会社に滞留している状態。雇用されている本人たちにしてみれば、所在なく活躍の場を奪われている状態ですね。このことを知ったとき、ミドルシニア層の再活性化が重要だと考えるようになったのです。
古畑:それは、いつ頃の話ですか?
野田:2011年でした。
古畑:10年以上前から取り組んでいらっしゃるのですね。
野田:このことは、会社と従業員という関係性から語れば、企業の成長力や人材活用の話です。しかし、デモグラフィック(人口統計学的な要素)からこの問題を見てみると、現在(2023年)すでに日本の労働人口は6,000万人を割り込んでいます。生まれてくる子どもは減って、いま現役の人もこれから年齢を重ねてどんどん仕事を離れていくわけですから、働き手が不足するのは確実です。
古畑:この国では、随分前から「少子高齢化」という言葉が使われていますが、そういう捉え方をすると、いま世間で言われている「キャリア自律」も、ベテラン社員の将来がどうこうというレベルの話ではありませんね。
人手不足は1,100万人!
野田:私はリクルートの「ワークス研究所」という研究機関で研究顧問もしています。最近、研究所が行った大規模調査に関わる機会があったのですが、その調査では、「2040年の労働需給」のシミュレーションをしていました。ここでは、詳しいことは省きますが、ものすごく精度の高いシミュレーションをしたんですよ。
問題はその結果ですが、古畑さんは、今後20年でどれくらいの労働力が足りなくなると思いますか?
古畑:そうですね…。私も以前同じようなことを調べたことがあったのですが、2040年ごろまでは、若手が減少する分を女性やシニア層の労働力でカバーしながら人数だけで言えばなんとか現在に近い数字が維持できると記憶しているのですが……。
野田:その見積もりは、まったく甘いですね。先のシミュレーションでは、2040年には1,100万人もの労働力が不足するという結果が出ています。
古畑:2040年にそんなに不足するのですか?
野田:もうすぐそこですよ。
このシミュレーションは、75歳までの男女、外国人…みんなに働いてもらうことを前提としたシミュレーションです。それでも1,100万人足りないのです。
この結果を受けて、労働力需給のギャップを埋めるための対策をシミュレーションしてみましたが、今後AIなどが発展し、それらを活用しても400万人も不足するという答えがでています。
古畑:社員個々のキャリアの問題ではなくなってきましたね……。
野田:はい。本当にまずい状態です。
今後もミドルシニアの人たちを雇用保蔵しようなんて考えでいると、本当にこの国がダメになってしまいます。企業はすぐにでも、ミドルシニア層を中心にどのような人も付加価値を発揮できるような「働かせ方改革」をしていかなくてはならないのです。それには、きめ細かい対策が必要になりますよ。
ミドルシニアの活躍というのは「焦眉の急」です。女性や外国人も大戦力です。でも、いままで会社の中でキャリアを積んできているミドルシニア層がいちばんリスキルしやすいことはご理解いただけますよね。
「42歳」は人生の「正午」
古畑:次に、ミドルシニアのリスキリングやキャリア自律についてご意見を伺います。以前野田先生の講演で、「42歳キャリア研修論」というお話を聞きしました。多くの企業では、やっと50歳・55歳くらいでミドルシニア向けのキャリア研修がはじまったばかりですが、野田先生は、やはり42歳での研修が最適とお考えですか。
野田:はい、42歳前後がいいですね。というのも、42歳って会社に入ってから20年くらい経っているわけですよ。定年が65歳だとすると残り23年あるわけです。42歳あたりは会社人生の中間点、まさに正午です。
また、42歳は人生の正午でもあるわけです。42年生きて、もう42年経てば84歳でちょうどいまの平均寿命くらいですよね。
人生の正午であり、会社人生の正午でもあるのが42歳と考える必要があるのです。その頃までは日が昇っていく人生を生きているのですが、その後は日が沈んでいく人生を歩むわけです。
日が昇っているときと沈んでいくときのキャリアの考え方は、おのずと違ってきます。
古畑:そうかもしれませんね。
野田:50代になれば、いまのポジションは後輩に譲って、これまでの経験を活かして新しいことを考える。そのとき慌てないために40代から考えておく必要があるわけです。
古畑:そうかもしれませんが、多くの会社では40代には、まだ、いまのポジションで頑張ってほしいからキャリア研修の対象にはしていませんね。
野田:これまでは、そうかもしれません。でも、さきほどもお伝えしたようにこれから人が不足するわけです。まだ柔軟性も残っている40代の内からその先についても考えるようにしないとその組織は持たないですよ。
このことについては、6月のセミナーで詳しくお伝えしますね。
古畑:ありがとうございます。まだ少し先ですがいまから6月のセミナーが楽しみです。
今日は、ご多忙のところありがとうございました。
*野田教授には、ここで紹介したインタビューのほかにも4つのテーマからお話を伺っています。お話の続きは5月24日から4週にわたって配信される「星和HRインフォメーション(メールマガジン)」にてお届けします。
5月24日 ミドルシニアに期待されるキャリア
5月31日 セルフブランディングの極意
6月07日 シニア起業というキャリアデザイン
6月14日 趣味の効用
【終了しました】
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