ミドルシニアの羅針盤レター2025-12

|
ミドルシニアの羅針盤レター 2025#12
|
【第4回】若手・中堅・シニアにどのように広げていくか―
|
|
習慣化コンサルティング㈱代表の古川武士氏に「自律型人材を育てるための習慣化メソッド」について、4回にわたって語っていただいています。
今回は最終回になります。 |
□若手:受け身の若手をどう変えていくか?
若手社員の面談で、よくこんな言葉を耳にします。
「何をしたいか分からない」「言われたことをこなすだけで精一杯です」
それは、決して意欲がないわけではありません。
まだ「自分のドライバー=心が動く理由」を見つけられていないだけです。
若手に必要なのは、“問い”と“小さな成功体験”です。
上司が「どんな時に楽しいと感じる?」と尋ね、その答えをもとに小さな行動を一緒に設計する。
たとえば、「お客様と直接話すのが好き」なら、先輩と同行して会話の楽しさを感じてもらう。「整理整頓が得意」なら、チームの業務フローを整えるミニプロジェクトを任せる。
こうした“小さな成功”が積み上がると、「自分はこういう時に力を発揮できる」という感覚が芽生え、自己効力感(I can感覚)が高まります。自律の第一歩は、「できた」という感覚から始まるのです。
若手が動かない時、人事は「教育が足りない」と考えがちですが、実は「成功体験の設計」が足りないことが多い。「できる仕組み」をつくることこそ、最も効果的な支援です。
□中堅:事なかれ主義になった中堅をどう再燃させるか?
多くの組織で、中堅層は「上からも下からも求められる板挟み」のポジションです。 部下指導、業務推進、上司報告――日々の忙しさの中で、いつの間にか「無難にこなす」「波風を立てない」という“事なかれ主義”に陥りがちです。
しかし、この層が変わると、組織は一気に動き出します。
なぜなら、中堅層は現場の空気をつくる「文化の中間管理者」だからです。
中堅に必要なのは、「自分のディープドライバーを再点火すること」。
たとえば、「挑戦が好き」だった人が、いつの間にか“守る側”に回っている。
その人がもう一度、自分の原点に戻り、「なぜこの仕事を選んだのか」を思い出すだけで、空気が変わります。
私がある製造業の管理職研修で聞いた言葉があります。
「20年前は新しい技術にワクワクしていた。最近は部下に“やめておけ”と言っている自分に気づいた」
その方は翌週、チームにこう伝えたそうです。
「俺も一緒に新しいやり方を試したい」
その瞬間、部下の目の色が変わったといいます。
中堅が再び“挑戦の空気”をつくると、若手は自然に動き出すのです。
マネジメントとは、「やらせること」ではなく、“火をともす文化”を自ら体現すること。中堅が動けば、組織の酸素が流れ始めます。
□シニア:老害にならず、シニアが尊ばれるためにどうするか?
定年後、再雇用となった方々にお会いすると、「安く使われている気がする」「今さら何を目指せばいいのか分からない」という声をよく耳にします。
それは自然な感情です。
地位や役職という“外的なラベル”が外れたあと、人は一度、空白を経験します。
しかし、ここからが本当の「自律の出番」です。
シニア期とは、「会社に尽くす」から「自分のために生きる」へと人生の軸をシフトさせるチャンスなのです。
「これまでの経験を誰かに渡す」
「後輩を支援する」
「専門性を磨き直す」
このような“内的動機”を再発見できた人は、再雇用でもイキイキと働き続けています。
実際、私たちが行っているシニアライフデザイン研修では、「もう一度、自分のディープドライバーを見つける」ことから始めます。
最初はモヤモヤしていた方も、ワークを通じて「自分は“支える”ことで生きがいを感じる」「“知恵を渡す”ことが自分の使命だ」と気づくと、表情が一気に明るくなります。
老害とは、過去にしがみつくこと。しかし、“内なる動機”を持ったシニアは、むしろ若手にとって“尊敬の対象”になります。
年齢ではなく、「自分の中の火がついているかどうか」が、尊ばれるシニアの条件です。
□人事がつくる「仕組みの三層」
自律文化を根づかせるために、人事やマネジメントが意識すべき“3つの層”があります。
行動の仕組み(ベビーステップ(小さな行動))
小さく始める行動設計。15分・1分・1歩でできるようにする。
思考の仕組み(問いかけと対話)
「なぜやるのか?」「どんな価値があるのか?」を考える時間を設ける。
感情の仕組み(称賛と共有)
成果よりも「やってみた」という勇気を認め合う文化をつくる。
この3層を繰り返すことで、社員一人ひとりのディープドライバーが再点火し、組織全体に“自律の空気”が広がっていきます。
□「文化」とは、繰り返された習慣の総和
文化とは、誰かがつくるものではなく、「繰り返された習慣の総和」です。
小さな行動を積み重ねる人が増えるほど、職場には自然に前向きな空気が流れます。
“やる気を出す文化”ではなく、“やる気が出てしまう文化”。
それを支えるのは、一人ひとりのベビーステップ(小さな行動)です。
だからこそ、人事の役割は「文化を語る」ことではなく、「小さな習慣を支援する仕組み」を設計することなのです。
|
【筆者プロフィール】
古川 武士 (ふるかわ たけし) 習慣化コンサルティング株式会社代表取締役 1977年大阪府生まれ。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。 約5万人のビジネスパーソンの育成と1000人以上の個人コンサルティングの経験から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、「習慣が人を育てる」をミッションに、法人向けに「ザ・習慣化プログラム」(キャリア自律の習慣化)(仕事の高密度化研修)などを提供している。NHK「あさイチ」「ごごナマ」、TBS「情報7daysニュースキャスター」など250以上のTV、ラジオ、雑誌に出演。著書は、習慣化に特化したテーマでこれまでに25冊を出版し、累計120万部を超える。 |
当メールマガジンは一般社団法人定年後研究所が総合監修し、配信運営は株式会社星和ビジネスリンクが行っております。
